外注費とは?仕訳例や発行書類とインボイス制度への対応について解説
こんにちは!「楽楽販売」コラム担当です。
業務品質や生産性の向上を目的とした業務委託にかかる費用を「外注費」と呼びます。
この記事では、外注費の仕訳例や給与や支払手数料との違い、必要な発行書類、そして2023年10月から施行されるインボイス制度によって変わることなどについて解説します。
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この記事の目次
外注費とは
高い専門知識を必要とする業務や社内にノウハウがない業務の一部を外部委託する際に支払う費用を「外注費」といいます。これは仕訳の勘定科目としても使用する用語です。
例えば、Webサイトや製品パッケージのデザインを自社で制作するのが難しい場合、外部のデザイン会社や個人のデザイナーに依頼することになります。その際に発生する外部への支払いが、外注費にあたります。
現在、多くの企業は人材不足に直面しています。デザインやホームページの制作・メンテナンスのための人員を確保し、社内で教育していくのは簡単ではないでしょう。
専門業務を外注すれば人材採用・教育の負荷もかからず、社内の限られたリソースをコア業務に充てることができます。
加えて、専門業者に依頼することで業務の効率化や品質向上も期待できます。このことから、外注の活用は企業にとって大きなメリットがあるといえるでしょう。
外注費の仕訳の例
外注する取引先が法人か個人かによって、外注費の仕訳は異なります。
ケーススタディとして、Webサイトのデザインを20万円で依頼した事例を見ていきましょう。
法人取引先の場合
法人が取引先の場合は、「借方」に「外注費 200,000円」、「貸方」に「普通預金 200,000円」と記載して仕訳します。
個人取引先の場合
個人取引先の場合も基本は法人取引先と同じです。しかし、デザイナーやプログラマーといった一部業種の取引先に外注費を支払う際は、発注元が所得税の源泉徴収を行う必要があります。源泉徴収の税率は仕事の種類によって異なるので注意が必要です。
今回の例では、仮に源泉徴収税が10%として計算をしています。源泉徴収は一般的に「預り金」という勘定科目で仕訳を行います。
記載方法は、「借方」に「外注費 200,000円」、「貸方」に「普通預金 180,000円、預り金 20,000円」となります。
外注費と支払手数料との違い
「支払手数料」は、外注費と混同されやすい勘定科目です。支払手数料も外部に業務を依頼する際に発生する料金ですが、外注費の委託先よりも専門性の高い業種に対する報酬を指します。 専門性の高い業種には、弁護士や税理士、公認会計士、司法書士などが当てはまります。
外注費と給与との違い
外注費と給与は混同しないようにしましょう。原則として、給与と比べて外注費には社会保険料の加入義務や所得税の源泉徴収の必要がありません。消費税の控除も受けられるという利点もあります。
しかし「納税額や人件費を抑えるために、従業員に支払う給与を外注費として仕訳けよう」という考えは間違いです。自己都合で外注費を給与と仕訳すると、税務調査で給与であると指摘されることがあります。
給与の判断基準
外注費と給与の会計上の処理は、区分がはっきりと分けられているわけではありません。そのため、たびたび税務調査で争点となることがあります。
原則として、外注先と交わす請負契約書や、従業員との雇用契約書といった「契約書類の内容」が根拠となるのではなく、実際の業務が外注または給与のいずれかに相当するかどうかで判断されます。
外注か給与かを判断する基準には以下の5つがあります。これらに関する事実を総合的に調査して判断が下されます。
- 時間的拘束性:作業時間が厳密に決められているか
- 指揮監督:仕事の遂行にあたり発注者から直接の指揮監督を受けているか
- 報酬請求権:業務を遂行しないと報酬を得られないか
- 材料や道具等の調達:仕事にかかる道具や材料の費用を発注者に負担してもらっているか
- 代替性:他人が仕事を代替できるか
外注費が給与と指摘された時の影響
外注費は消費税や源泉徴収税がかからないので、税金面においてメリットのある勘定科目です。それだけに、税務調査の対象としてチェックされやすい項目でもあります。給与にすべき項目を外注費と偽って申告したことが指摘されると、追徴課税を求められます。
外注費と仕訳していた項目が給与だと指摘された場合の影響について知っておきましょう。
源泉徴収税の課税
個人の一部業種の取引先以外の外注費には、基本的に所得税を源泉徴収する必要がありません。しかし、外注費と仕訳していた項目が給与だと指摘された場合には、発注者が所得税を源泉徴収することになります。
給与所得に対する源泉徴収税は、給与額や扶養親族等の人数によって異なります。過去に遡って外注費が給与だと指摘されてしまうと、まとまった金額を納付しなければなりません。
消費税の納税額が増える
一般的に、外注費は消費税を含めて取引先に支払います。これを「課税仕入取引」といい、消費税分は「仕入税額控除」を受けられます。しかし給与の場合は課税対象外となるため、仕入税控除は受けられず、消費税を全額納付しなければなりません。
外注費が給与として認定された場合、控除を受けていた仕入消費税分がそのまま追徴課税として徴収されます。
ペナルティが課せられる
外注費と申告していた項目が給与だと認定されると、後からペナルティがあります。
前述のように、源泉徴収税や消費税といった納めるべき税が加算されるだけでなく、延滞税も課せられることになります。もし、複数年にわたって指摘されてしまった時は、大きな負担を覚悟しなければならなくなるので注意しておきましょう。
外注先と発注者が発行する書類
外注費の取引において、業務を依頼した外注先と発注者側のそれぞれが発行する書類について解説します。
【外注先】請求書の発行
外注費が発生した場合、一般的には外注先が発行する「請求書」が必要になります。外注先から請求書が届かない場合は、発行するように電話やメールでお願いをしましょう。
何らかの理由で、外注先が請求書を発行したのに手元に届いていない場合もあり得るので、「本メール(電話)と行き違いになっている場合はご容赦ください」といった相手への配慮の言葉も忘れないようにしてください。
加えて、記入ミスなどにより再発行の必要がある場合は、修正して欲しい旨を明示して再送を依頼します。
【発注者】支払明細書の発行
発注者は、外注先に対して「支払明細書」を発行します。
支払明細書とは外部との取引内容を明記した書類のことで、支払いが発生した日時や業務内容、料金、税額などを記載します。これにより、外注先と発注者側の双方が外注の取引内容を確認することができます。
帳票書類の発行に不慣れな個人事業主などは、給与とみなされるような請求書を発行してしまうことがあります。
事前に支払明細書を発行し、確認の上請求書をもらうようにすれば、記載内容に相違が生まれません。
インボイス制度導入により変わること
2023年10月からスタートするインボイス制度によって、個人事業主やフリーランスなどへの外注費にかかる消費税の取り扱いが変更になる場合があります。
通常、年間売上が1,000万円以上になる事業者は「課税事業者」として消費税を納める義務があります。ただし、1,000万円に満たない事業者は「免税事業者」として扱われるので、消費税を納める必要がありません。
外注先として一般的な業種といえば、フリーランスのデザイナーやITエンジニアなどが当てはまることが多いでしょう。
前者の「課税事業者」が発行する請求書が「適格請求書(インボイス)」であり、そこに記載された消費税分のみが仕入税額控除の対象になるというのがインボイス制度です。
つまり、2023年10月の制度開始以降は、課税事業者以外の取引先に支払った消費税は支払税控除を受けられなくなるのです。
発注者側として仕入税額控除を重視する場合は、取引先に課税事業者であるかを事前に確認するなどして、外注するかどうかを判断することになるでしょう。
外注管理の効率化にはシステム導入を
外注費がいくつも発生する案件は、進捗状況の把握が煩雑になります。
外注先によって異なる支払サイトに対応するには、経理的な作業も負担になります。加えて、取引先とのコミュニケーションが自社の窓口担当者に依存しがちになるので、属人化による負荷や人的ミスの発生にも注意をしなければならないでしょう。各自がエクセルや紙で外注先を管理していては、何らかの理由で担当者が不在になった場合に速やかにフォローに回ることができません。
外注管理を効率的に行うには、「販売管理システム」のような仕組みを組織的に導入することをおすすめします。
クラウド型の販売管理システム「楽楽販売」なら、外注先との案件や支払情報をシステム上に一元化できるので、情報共有や作業時間の短縮、対応漏れやミスの軽減などが実現します。
例えば、発注データからワンクリックで発注書を発行して作業を効率化したり、外注先ごとの支払金額の自動計算、支払期日に合わせたアラートを設定して対応漏れやミスを防いだりできます。
外注先情報を一元化しておけば、窓口担当者が不在の場合でも他のメンバーが外注先とコンタクトを取ることも容易になります。
システム化により外注管理が安定すれば、事業拡大により外注先が多くなっても安心です。
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まとめ
多くの企業が人材不足に頭を悩ませる中、自社のノンコア業務を外部に委託することは、コア業務にリソースを注力できるようになるので大きなメリットがあります。専門性の高い業務を外部のプロに任せられると、業務の効率化や質も向上します。
ただし複数の外注取引を進行していると、案件内容や支払サイトが取引先ごとに異なり、正しく管理して遂行するのが難しくなります。円滑に業務を遂行するためも、販売管理システムのような企業内の外部取引業務を一元管理できるツールを用いて、管理の正確性と効率性を高めることをおすすめします。
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記事執筆者紹介
- 株式会社ラクス「楽楽販売」コラム編集部
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