棚卸しとは?必要な理由や実施するタイミング、注意すべきポイントについて

こんにちは!「楽楽販売」コラム担当です。
在庫を抱える業種の場合、定期的に棚卸し作業を行います。しかし、その目的をよく理解せず、作業が慣例的になっているケースも多いのではないでしょうか。棚卸しは品質管理や利益確定のための重要な業務です。本記事では棚卸しの目的や手順の確認と注意点についてご紹介します。
詳しく知りたい方はこちら!
この記事の目次
棚卸しとは
「棚卸し」という言葉は「人生の棚卸し」「業務の棚卸し」など生活のさまざまなシーンで耳にすることがあると思いますが、今回の記事では、事業の取扱商品の在庫量やその価値を定期的に調べる作業としての「棚卸し」について解説していきます。
棚卸しの代表的な作業としては、倉庫に保管している取扱商品の正確な在庫量を数える業務が挙げられます。棚卸しの対象となるのは、自社が取り扱う製品や商品といった「現在販売できる資産」、原材料や仕掛品といった完成前の商品である「将来的に売ることができる資産」等です。また販売するための資産だけでなく、貯蔵品や消耗品などの会社が所有する「数えられる資産」も対象となります。
棚卸しは、モノとしての数字を数えるだけでなく、商品が劣化せず品質が保たれているかどうかも点検する大切な業務です。棚卸しで確定した数量から期末の棚卸資産を計上することになるので、抜け漏れなく正確に行うことが求められます。
なぜ棚卸しが必要?
それでは、棚卸しが必要とされる4つの理由をご紹介します。
理由1.利益を確定するため
まず、利益を確定するために棚卸しを行うというのが1つの理由として挙げられます。
会社の場合は、ステークホルダーに対して財務状況を明らかにするために、該当年度でどのくらいの利益を出し、いくらのコストがかかったか等を決算時に計上しなければなりません。個人事業主の場合も同様で、納税のために正しく計上する必要があります。
棚卸しによって在庫数とその品質の状態がわかれば、「現在及び将来的に販売できる資産=棚卸資産」が正確に把握でき、利益計上の精度を上げることにつながります。
理由2.適切な在庫管理のため
棚卸しには、在庫が多すぎないか、または不足していないかを確認する在庫管理の役割もあります。
顧客への納品をスピーディーに行うにはある程度の在庫量を確保しておく必要がありますが、在庫数が極端に多いと資金繰りにも影響します。反対に、倉庫の規模に対して極端に在庫数量が少ない場合は、無駄な賃料を支払っているとも考えられるのです。
棚卸しによって在庫量をチェックすることは、資金繰りや経費の改善にもつながります。さらに、エクセルファイルや在庫管理システムに記載している在庫数量と、現物の数量にギャップがある場合は、事業のなかで消失したり誰かに横領されたりしている可能性があります。棚卸し作業は、そのような事実をできるだけ早く把握するきっかけにもなるでしょう。
理由3.品質管理のため
棚卸しは、モノの数量を数えるためだけに行うのではありません。商品や原材料などの品質が劣化していないか、適正な価値を保っているかをチェックするためにも重要な作業です。
特に賞味期限・消費期限のある商品を扱う事業者は、棚卸しの頻度を上げて品質管理を強化していることが多いでしょう。
また市場における需要の状況などから、商品の価値が低下していないかを確認するという意味でも棚卸しは大切です。製品化した時より需要が低減している場合は、おのずと在庫品の価値も仕入れ時点より落ちてしまうためです。この場合、決算上では「商品評価損」という会計処理を行う必要があるため、確認しておかなければなりません。
理由4.在庫管理業務の見直しのため
棚卸しは、場合によっては会社の業務を一旦ストップして、多くの従業員が携わることになります。業務の滞りを最小限にするためには、在庫管理のプロセスの最適化がポイントとなります。
棚卸しでは品目や数量といった管理が煩雑になるため、手書きの帳簿ではなく表計算ソフトのエクセルや、商品の流れを把握する販売管理システムなどの自動化ツールを導入している事業者が多いでしょう。しかし、エクセルを例に挙げると、ファイルに記録したデータ量が増えるほど動作が遅くなってしまうなど、既存の管理方法だと弊害が発生するようになっていることもあります。
棚卸しは一度に在庫品の全てを確認する作業なので、現在使用しているツールの利便性が落ちていないかを見直すタイミングとしても最適です。
棚卸しをするタイミング
棚卸しのタイミングとしては、少なくとも年1回の決算時に行い、棚卸資産の残高を確定させましょう。
商品の性質によっては経年劣化が起きていないか等を確認するためにも、中間期や四半期、月1回など、回数を増やすことをおすすめします。食料品の小売や飲食業など、保存期間に限りある商品のストックが欠かせない業種の場合は月1回ペースで実施していると安心です。
棚卸しのやり方
棚卸し作業の方法としては、「タグ方式」と「リスト方式」があります。ここからは、それぞれのメリット・デメリットについて触れつつ棚卸しのやり方をご紹介します。
タグ方式
タグ方式とは、担当者が対象物の品目や数量を確認して「棚札(タグ)」を作成し、商品に漏れなく貼付して行う棚卸し作業です。商品や半製品などの現物の数量と、理論上の棚卸資産の数字を照らし合わせて行うアナログな方法です。
タグを現物に貼り付けていくため、計上漏れが発生しにくい点がメリットです。その反面、タグの番号を管理したり、タグを貼付したりする作業に手間がかかる点がデメリットといえます。
リスト方式
一方で、リスト方式とは在庫管理表(リスト)にある数字の方を基点とした棚卸し作業のことをいいます。リストにある数字に対して、現物を数えた数量が合致しているかどうかを確認する方法です。
リストの数字ありきで現物を確認するため、タグ方式と比べて短時間で棚卸し作業が完了するため効率的といえます。ただし、リストに入力していない商品があった場合、リストと現物の数量が異なる原因を突き止めるのに時間がかかることがデメリットです。
棚卸しで注意すべきポイント
続いて、棚卸しの際に注意しなければならないポイントを見ていきましょう。
カウント・入力に漏れがないか
棚卸し作業で特に警戒しておきたいのが、在庫数のカウントや入力をする際の漏れ・ミスがないかどうかです。人の目で数を数えたり、入力を手作業で行ったりする場合、ヒューマンエラーの発生を完全になくすことは難しいかもしれません。しかし、棚卸し作業でこのようなミスが発生してしまうと、単に在庫量の数が合わなくなるだけでなく、利益を間違って計上してしまうことになります。利益を多く、あるいは少なく計上してしまうと、のちに会計上の深刻な問題となるためカウントや入力に漏れ・ミスがないかどうかは注意深く確認する必要があります。
棚卸しの書類は7年間保存
事業の経理や会計に関する書類には、決算書や請求書、契約書などさまざまなものがありますが会社法や法人税法などの法律のもと、それぞれ保存期間が決められています。
棚卸しに関する取引書類は「棚卸表」といい、作成日から最低7年間保存することが義務付けられていることを覚えておきましょう。
棚卸しの結果が記録と合わない原因とは
棚卸しの結果、実際の在庫量と帳簿上の記録と異なる場合がありますが、そのまま放置すると決算書にも偽った数字を記載することになります。故意ではなかったとしても、利益を大きく見せる「粉飾決算」と判断される恐れがあります。反対に、帳簿に計上されるべき資産の記載が漏れてしまった場合も過小報告となってしまう可能性があります。
このような事実が発覚すれば、税務上のペナルティや行政処分が課されるリスクがあるだけでなく、社会からの信用も失ってしまうかもしれません。
棚卸しの結果が記録と異なる原因としては、材料を仕入れた際や商品として販売する際に、数量を誤ってカウント、記録している可能性があります。これらは、手書きの帳簿やエクセルファイルに手作業で記録をしたり、業務自体が担当者に属人化したりして、チェック機能が正常に働いていない場合に起こりやすいミスです。
さらに、在庫管理ルールが現場で徹底されておらず、場当たり的に対応している場合にも数量の矛盾が起こりやすくなるといえます。
在庫管理のルールやマニュアル書を作成し社内で浸透させるなど、誰が行っても同じ在庫管理や棚卸しができるような環境づくりが求められるでしょう。
棚卸しはシステムの導入で効率化
棚卸しは定期的に行う必要があり、一般業務をストップさせて実施しなければならないほど煩雑な業務です。在庫数が多い業種や、さまざまな種類の棚卸資産を抱える事業者ほど、棚卸し業務の負荷は大きくなります。
小規模の事業者なら、エクセルや手書きの帳簿で管理することができるかもしれませんが、前述の通り、アナログな手法では棚卸しの結果が記録と合わないなどのミスも起こりやすくなります。
これらの問題を解決し、作業を効率化するためには在庫管理システムの導入がおすすめです。帳簿の入力が自動化されるので、入力ミスやカウント漏れを防ぐだけでなく、ミス発覚時の手戻りそのものが不要になるため棚卸しにかかる負荷を大幅に軽減できます。
「楽楽販売」のようなクラウド型販売管理システムなら、各拠点の在庫数やデータをリアルタイムで共有することが可能です。他店舗の在庫状況を随時把握したりリモートワーク中でも在庫量を確認できたりなど、棚卸し以外の業務についても効率化が期待できます。
関連記事はこちら 在庫管理のクラウド化で効率化!在庫管理システムを徹底比較! | 「楽楽販売」
まとめ
棚卸しは、適切な在庫管理のためはもちろん、正確な決算書作成のためにも欠かせない業務です。最低でも決算期に1回、または中間期・四半期ごとに1回、月1回など、業務や取扱商品に適したタイミングで、定期的な実施が求められます。
棚卸し業務は煩雑であるため、手書き帳簿や手入力のエクセルでのアナログな手法ではミスやトラブルが発生しやすいです。
決算書の正確性と日頃の在庫管理業務の効率を上げるために、専用システムを導入するなど自社に適した改善を図ることをおすすめします。ぜひ、この機会に棚卸し業務の見直しをしてみてはいかがでしょうか。
詳しく知りたい方はこちら!
この記事を読んだ方におすすめ!
記事執筆者紹介
- 株式会社ラクス「楽楽販売」コラム編集部
- 「楽楽販売」のコラムでは販売管理・受発注管理・プロジェクト管理などをはじめとする、あらゆる社内業務の効率化・自動化の例をご紹介していきます!