企業会計原則とは?罰則はある?おさえておきたい7原則を解説
こんにちは!「楽楽販売」コラム担当です。
企業会計原則は、すべての企業が会計時に従う必要がある基準です。決算書の監査においても使われており公正な会計処理に欠かせないものといえます。この記事では企業会計原則の基本となる7原則などについて解説します。管理方法が変化することも多い企業会計ですが、まずは基本となる考えをおさえておきましょう。
詳しく知りたい方はこちら!
この記事の目次
企業会計原則とは
まず企業会計原則とは、企業が適切に会計処理をするための基本ルールです。企業が会計上守るべき原則として1949年に旧・大蔵省から公表されました。
企業会計原則そのものは法律ではないため、必ずしも守らなければならないものではありません。
ただし、会社法(第431条)には、「株式会社の会計は、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うものとする」との定めがあります。
この「公正妥当と認められる企業会計」の部分に企業会計原則が当てはまります。そのため、日本では長きにわたり企業会計原則を基準として会計処理が行われてきました。
会計監査でも、企業会計原則は従うべき原則として位置付けられています。
決算書(財務諸表)の仕様が企業ごとに異なっていては、企業のステークホルダー(利害関係者)が健全性や成長性などを判断しにくくなるためです。
企業活動がグローバル化する昨今では国際基準の会計原則が求められており、企業会計原則がかつてほど重視されなくなってきています。しかし、企業会計原則は今現在も会計処理の拠り所として存在しています。
一般原則/損益計算書原則/貸借対照表原則からなる
企業会計原則は「一般原則」「損益計算書原則」「貸借対照表原則」という3つの原則で構成されています。
「一般原則」とは、あとの損益計算書原則と貸借対照表原則の最高規範として最も重要な原則と位置付けられています。いわば企業会計の根幹となる指針のようなものです。
次の「損益計算書原則」は、収益と費用の計上にあたってのルールです。
そして「貸借対照表原則」は、資産・負債・資本の計上にあたってのルールを指します。
一般原則を構成する7原則
企業会計原則の中でも最も重要度の高いルールが「一般原則」です。
一般原則は次の7つからなります。
- 真実性の原則
- 正規の簿記の原則
- 資本取引・損益取引区分の原則
- 明瞭性の原則
- 継続性の原則
- 保守主義の原則
- 単一性の原則
それぞれの原文と解説を見ていきましょう。
真実性の原則
そもそも会計の内容に真実性がなければ、他の原則を守っていても意味がありません。そのため、「真実性の原則」が最も重視する原則として初めに記されています。
会計処理は企業の業務内容に合わせて最適な方法を採用することが認められていますが、会社法の「一般に公正妥当な範囲」であることが前提です。当然のことながら、情報の改ざんや虚偽の会計報告は認められません。
正規の簿記の原則
全ての取引を正確に会計処理し、正確な会計帳簿の作成をすることが「正規の簿記の原則」で定められています。
ここで言う正規の簿記については特定されていませんが、一般的には単式簿記ではなく複式簿記を指します。複式簿記とは貸方と借方の両面から取引を記載したもので、網羅性(全ての取引を漏れなく記録)・検証可能性(客観的な証拠の元に記録)・秩序性(継続的・体系的に記録)が満たされた作成方法です。
資本取引・損益取引区分の原則
「資本取引・損益取引区分の原則」は、資本を変動させる取引と利益を変動させる取引をはっきりと区別することを定めた原則です。
例えば、口座に入金があったときに資本として入金したのか、または売上利益として入金されたものなのかでは、会計として大きく異なります。そのため、資本取引と損益取引は明確に区別しておかなければなりません。
加えて、「特に資本剰余金と利益剰余金とを混同してはならない」と強調されているように、剰余金の性質についても明確な区別が求められます。資本金を使い尽くさないため、また利益隠しを防ぐためにもこの原則が設けられています。
明瞭性の原則
財務諸表は理解しやすいものにしておく必要があると定めているのが「明瞭性の原則」です。不明瞭な財務諸表では、ステークホルダー(利害関係者)が企業の業績や財政状況を正しく判断できないからです。
例えば、勘定科目については自由に作成することが出来ますが、誤解を招くような曖昧な表現は避けて一般的な表現を用いる必要があります。
加えて、重要な会計方針や重要な後発事象についての注記などにもこの明瞭性の原則が適用されます。重要な会計方針とは固定資産の減価償却方式や有価証券の評価方法などです。また重要な後発事象とは、企業合併や主要取引先の倒産や火災等による重大な損害など、次期以降に大きな影響を及ぼす事象のことを指します。
継続性の原則
「継続性の原則」では、一旦取り決めた会計方針はなるべく変更せず、継続した適用を求めています。
いくつかの会計方法から選択できるものとして、固定資産の減価償却を例に挙げてみましょう。減価償却を計算する方法には「定額法」と「定率法」の2種類がありますが、その都度計算方法を変えていては償却費の経過が分かりにくくなり、読み手を混乱させてしまいます。加えて計算方法を変えると利益操作を可能にしてしまうという理由もあります。
これらのことから、一度取り決めた会計方法を継続して毎期の会計処理を行い、期間ごとの比較をスムーズに行うことができるようにしておく必要があります。
ただし、会計方法の変更そのものは禁じられていないので、やむを得ない場合は変更しても構いません。変更があった旨を正当な理由とともに財務諸表に記しておくと良いでしょう。
保守主義の原則
企業に不利益になるかもしれない事象が起きた場合、慎重な判断を持って会計処理することを「保守主義の原則」といいます。
不利益な事象の例としては取引先に対する売掛金が貸倒れになる恐れがある場合などが挙げられます。この場合、貸倒れが確定してしまう前に速やかに損失処理を行う必要があります。迅速に対応することで、健全な財政状態をステークホルダーに示すことができます。
このように会計処理における保守主義とは、費用は早く・多めに、収益は遅く・少なめに見積もりもることを指します。ただし、度を超える保守主義は一般原則の筆頭である「真実性の原則」に反してしまうことになるので注意しましょう。
単一性の原則
一般原則の7つ目である「単一性の原則」とは、裏帳簿や二重帳簿といった複数の会計帳簿の作成は禁止するという原則です。
企業の財務諸表は「株主に向けたもの」「金融機関に提出するもの」「税務申告に使用するもの」といったように複数のパターンが存在することになります。
場面ごとに開示する項目が異なっても、総元となる会計帳簿はひとつであることが求められているため、税務申告時の財務諸表では利益を下げ、株主向けの財務諸表には利益を大きく記載するなど、故意に操作することは許されません。
守らなかった場合に罰則はある?
冒頭でも紹介したように企業会計原則は法令ではないことから、守らなければただちに罰則が科せられるものではないです。企業会計原則はあくまで健全な会計処理を行うための慣例的な位置付けとなります。
しかし、上場企業を対象とした金融商品取引法や、中小企業も対象となる会社法などの法令には「公正妥当な方法で企業会計を行うこと」と定められています。このことから「公正妥当な方法に当てはまる企業会計原則は守るべき」と一般的には認識されています。
つまり、企業会計原則を守らなくても直接的に罰則には該当しないものの、意図せず企業会計原則を破ってしまった場合、結果として金融商品取引法や会社法に反してしまうことになります。金融商品取引法に違反すると刑事罰で最高懲役10年または7億円以下の罰金、行政処分では業務停止命令など、重いペナルティが科せられることがあるため気を付けましょう。
会計管理にはシステムの導入がおすすめ
紹介したように、企業の財務諸表はさまざまな原則を守って作成することが求められています。これらの原則を理解したスキルの高い経理担当者であっても、手作業で正確に会計処理をするには多くのリソースが必要となります。
企業の会計管理をスピーディーかつ正確に行うには、会計システムを導入することをおすすめします。現場社員からの取引の申請や会計帳簿の記帳をスムーズにするだけでなく、表計算の自動化、経営レポートの見える化、過去の会計情報の一元化などにより、自社の経営状況をタイムリーかつ正確に把握することができるようになります。
近年主流になってきているクラウドタイプの会計システムなら、オフィスにあるデバイス以外からもアクセスできるので、リモートワーク時にも経理処理が行えます。
会計システムにより会計管理の属人化から脱却できれば、人的ミスの軽減や限られたリソースを別の重要業務に注力できるなどのメリットも期待できるでしょう。
まとめ
企業会計原則は、財務諸表の健全性を測る会計処理の慣例です。
大企業や上場企業には国際基準の会計処理が必要になってきていますが、現在でも多くの組織にとってはこの企業会計原則が守るべき会計処理の指針となっています。
この記事で詳しく解説した一般原則以外の「貸借対照表原則」「損益計算書原則」についてもルールが定められています。企業会計原則への理解を深めて正しい会計処理を行い、業績向上と社会への信頼獲得を目指してください。
詳しく知りたい方はこちら!
この記事を読んだ方におすすめ!
記事執筆者紹介
- 株式会社ラクス「楽楽販売」コラム編集部
- 「楽楽販売」のコラムでは販売管理・受発注管理・プロジェクト管理などをはじめとする、あらゆる社内業務の効率化・自動化の例をご紹介していきます!